教員紹介 ~生命環境系教授 佐藤忍先生

-佐藤先生は、どんな子供だったんですか?
Prof.Satoh僕は、横浜で生まれ育っています。一人っ子だったこともあり、一人で何かをやっているのが好きでした。僕のバイブルは学研の「科学」と「昆虫図鑑」で、それをずーっと眺めているような子どもだったなあ。小学校4年生の時、僕が虫キチだということを知った友達のお父さんが、カイコの卵をくれたんだよね。横浜だから近くに桑の木がなかなかなくって、探し回りました。ようやく見つけた桑の木から、葉っぱをとってきて、一生懸命育てました。今でも覚えているんだけど、ある朝起きたら、繭からかえったカイコガが、交尾して卵を産んでたんだよね。初めて卵から幼虫、成虫にして卵を産ませるというライフサイクルを回せたことが、すごく嬉しかったです。
中学に入ってからは生物の先生と一緒に植物採集をかねた山歩きによく行きました。山で根ごと植物を取ってきて、それを植木鉢に植えて育てていました。枯れちゃうことがほとんどだったけど。これで植物が好きになりました。
高校になってからは、水草の栽培をよくやっていました。水草と言っても、みんなが想像する水槽の中の水草ではなく、田んぼなどに生えているオモダカなどのように、茎の部分が水面に出ている水草です。確か、猪苗代湖の辺りに行ったときに、ジュンサイみたいな水草が生えているのを見て、採ろうと思って、水の中に深く突っ込んだ手を抜いてみたら、ヒルがばーっと腕についていてね。それは今でも忘れられません(笑)。
-どうして研究者の道を選んだのでしょうか?
友達の多くは「生物はつまらない!」と言ってたんだよね。でも、僕は「生物は面白い!教え方がよくないんだ!」と思っていました。だから生物の教師になろうと思い、大学は理学部に進みました。学部生の間はまだ教師になろうと思ってたんだけど、大学院に行ったときに研究の面白さに目覚めました。自分で考えて、それを試して、結果を検討してまた考えてという繰り返しが面白かったんです。「修士課程の間に論文を発表する」という目標を立てて、それをクリアしたことで、研究者としてやっていけるかもと思い、博士課程に進みました。
-GFESTをはじめた理由を教えてください
いくら授業を受けても主体的な人間は育ちません。僕自身は高校時代までは専門的な教育を受けず、アマチュアだけど生き物に興味を持ち続けて、自分で虫を飼ったり植物の栽培を行ったりしていました。大学に入ってからは、大好きなことだから、研究を一生懸命やるようになりました。
研究をするということは、非常に総合的な学修です。本に向かって勉強するのも大事だけど、自分で物事を考えて、自分で切り開いていく信念と熱意を持ち、こつこつとそれを続ける研究という活動を通して、社会にも通用する能力が身に付くと、僕は信じています。
一方、知識欲が旺盛で、さまざまなことを学ぶのが好きな人もいます。TL(科学トップリーダー)コースの受講生にはそういう人が多いでしょう。やらなくてはいけない勉強・与えられた勉強だけではなく、自分自身で新しいことを学んでいく意欲と能力を持ち、分からないことも一生懸命自分で考えることで、将来どの様な分野に進んでも通用する能力が育まれると思います。
研究をするSSコースと自主学習をするTLコースは、参加する受講生のタイプや資質が違うことでしょう。SSコース生は研究者を目指す人が多く、TLコース生は将来、実業界や政界・官界などで活躍していく人が多いのではないかと思います。共通プログラムではSSコース生とTLコース生が一緒に受けていて、とても楽しそうに交流しているのを目にします。SSコースの人は、TLコースの人と話して「理解力が高いなあ。優秀だなあ。」と思うでしょうし、TLコースの人はSSコースの人に対して「一つのことに打ち込んでいる人もいるんだなあ」と思うことでしょう。お互いに感化しあっていることと思います。二つのコースの受講生が一緒に触れ合う機会があるのは本当にいいことだと思います。
-佐藤先生のおすすめの本はなんですか?
いつも言うんだけど、ファーブル昆虫記です。この本は、単なる昆虫記ではなく、様々な実験を試みた記録、つまり昆虫実験記です。高校生にとっても、大人にとっても、科学好きな人にとって非常によい本だと思います。
●筑波大学佐藤忍研究室HP